広島市の女性遺言 自宅跡が集会所に
広島市東区東蟹屋町の自宅を取り壊し、新しくできた鉄骨2階建ての集会所。
寄付した故・岡峰禮安(レア)さんの名にちなみ、「岡峰会館」と名付けられた。禮安さんは戦艦大和の乗組員だった夫の正雄さんと結婚し、1954(昭和29)年から同町内で生活。90年11月に夫に先立たれ、その後約19年間、一人暮らしだった。近所の住民らは声かけを欠かさず、禮安さんは生前、「この町が大のお気に入り」と話していたという。
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禮安さんはJR広島駅近くで長年、夫婦で靴屋を営んでいた。子供がおらず、生前、遺産について弁護士で県議の間所了さん(70)に相談。2003年10月に作成した遺言公正証書に「全財産を東蟹屋町に贈りたい」と記した。遺言執行者に指定された間所さんは「気持ちを形にしたい」と考え、当時の町内会長らと話し合って集会所建設に合意し、今春完成した。
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先月19日にあった落成式には、近所の住民ら約50人が出席。東蟹屋町東部町内会長の滝山章(あきら)さん(74)は「集会所は町内会の夢でした。岡峰のおじちゃん、おばちゃんありがとう」と感謝の言葉を述べた。禮安さんと生前親交があった町内会の人々は「誰にでも笑顔で話しかけ、みんなに慕われていた」「昭和30年代、テレビをいち早く購入したのが岡峰さん宅。『見においで』とよく誘ってもらった」と懐かしんだ。
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正雄さんのめいにあたる親族の浜岡京子さん(57)と渡辺笑子(えみこ)さん(71)も出席。「自分で何でも決めておかないと気が済まないおばちゃんらしい」と話していた。
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集会所の玄関横には、岡峰さん夫婦が寄り添う写真と、2人の経歴を記した銘版が設置された。
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※1:平成21年11月16日 岡峰会館起工式(右側が間所弁護士)
※2:岡峰夫婦の経歴を紹介した銘板
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平成22年7月24日(土)朝日新聞より転載
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※3,4:平成22年6月19日(土)岡峰会館落成式